従来のイメージを刷新した異色の西部劇ー演出の魅力
本作は、19世紀の西部開拓時代を舞台に、実在の伝説的強盗をモデルにしたブッチ・キャシディとザ・サンダンス・キッドのボリビアへの逃避行を描いた西部劇だ。
監督は『スローターハウス5』(1972年)などで知られるジョージ・ロイ・ヒルで、脚本は『大統領の陰謀』(1976年)のウィリアム・ゴールドマン。ブッチ役をポール・ニューマン、サンダンス役をロバート・レッドフォードが演じる。
犯罪モノである本作は、一般的にアメリカン・ニューシネマの代表作と言われることが多い。アメリカン・ニューシネマとは、反戦運動や公民権運動などの反体制的なムードの中で醸成されたアンチ・ヒーロー映画で、他には『俺たちに明日はない』(アーサー・ペン監督、1968年)や『イージー・ライダー』(デニス・ホッパー監督、1970年)が知られている。
しかし、本作は、アメリカン・ニューシネマというジャンルでは簡単に括れない豊かさで溢れている。まず何より、本作は、手に汗握るガンアクションが登場する、古き良き西部劇だ。加えて、退廃的なムードをまとった他のアメリカン・ニューシネマ作品とは異なり、最後まで逃避を続けるブッチとサンダンスの姿は美しく、生きる希望に溢れている。
また、銃撃シーン以外でも記憶に残るシーンが目白押しであるという点も、本作の豊かさを証明している。たとえば、音楽の項目でも触れる、ブッチがエッタを後ろに乗せて自転車を走らせるシーンは、性と暴力を前景化させた作品が多くを占めるアメリカン・ニューシネマ的なムードから遠く離れ、フランスのヌーヴェル・ヴァーグ、とりわけフランソワ・トリュフォー作品に通じる軽やかな運動感に満ちている。
ニューマンとレッドフォードの演技にウィリアム・ゴールドマンの脚本、名手コンラッド・L・ホールの映像、そしてバート・バカラックの音楽と、映画の各要素が全て高い水準に達しているのも、本作が時代に耐えうる名作である所以でもある。
そういう意味で本作は、アメリカン・ニューシネマだけでなく、西部劇映画史、世界の映画史に輝く名作だと言えるだろう。