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リアルへの比類なきこだわりー映像の魅力

ジャック・ロウデン
コリンズ役のジャックロウデンGetty Images

ノーランのリアリティ志向は、映像にも表れている。

まず、撮影では、実際のダンケルクをロケ地として採用し、残存する1940年当時の防波堤をもとに新たに防波堤を建設。さらに撮影では、引退した軍用艇を含め、本物の軍艦を60隻用意し、徹底したリアルを追求したという。そして、なんといっても驚きは、ファリアたちが搭乗する戦闘機・スピットファイアだろう。ノーランは、本作のためになんと本物のスピットファイアを2機用意し、さらに5億円をかけてレプリカを制作したという。

こういったノーランの苦労とこだわりは、本作の映像の端々に表れている。例えば、ドーソンたちが救助に向かうシーンでは、CGを使用せずに民間船のムーンライト号と敵機に狙われるイギリスの駆逐艦、そして敵機を追うスピットファイアという「三つ巴の戦い」をワンショットに収めるという離れ技を披露しており、実際の戦場さながらの臨場感が感じられる。

なお、航空シーンは、実際の戦闘機に大型のIMAXカメラを搭載して撮影。撮影監督を務めるホイテ・ヴァン・ホイテマは、撮影に先駆けて何度も戦闘機に搭乗し、狭いコックピットに乗って飛行する感覚を掴んだといい、高度300mから急降下してもカメラに付きっきりだったという。

また、戦闘機が着水するシーンでは、IMAXカメラを固定した戦闘機をカタパルトで射出して撮影が行われたとされ、海に沈んでいく様子を撮影するため、なんと高価なIMAXカメラを防水加工した上で水に浸して撮影したという。

ちなみに、この撮影時には、機体とともにカメラが海底に沈んでいくという考えたくもない悲劇も起こったとのこと。ダイバーがカメラを引き上げたのは役90分後のことで、幸いフィルム撮影だったため、水洗いし現像できたのだという。

もしノーランがデジタル撮影を採用していればこの時点で制作は頓挫したこと間違いないだろう。こういった事故のことを考えると、フィルムカメラの方が意外と経済的なのかもしれない。

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