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城の廃墟に響くおどろおどろしい謡曲―音楽の魅力

(左)ジョージ・ルーカス(中)黒澤明(右)スティーブン・スピルバーグ【Getty images】
左ジョージルーカス中黒澤明右スティーブンスピルバーグGetty images

 

能というテーマは、本作の音楽にも反映されている。

例えば、本作のオープニングでは、朽ち果てた蜘蛛巣城を背景に、唸り(低音で絞るように歌う謡曲)がとどろく。その声は、まるで洞穴に吹く風のようであり、実におどろおどろしい。

見よ 妄執の城の跡
魂魄未だ住むごとし
それ執心の修羅の道
昔も今もかわりなし

なお、この謡曲は、本作のエンディングでも流れる。オープニングとエンディングを同じ謡曲ではさむことで、変えることのできない既成事実の虚しさと無常感をより際立たせることに成功している。

なお、音楽を担当した佐藤勝は、劇中のBGMにも能の音楽を導入。能の大ノリ(1拍1字を基本に歌われるリズム)や平ノリ(七五調の12文字を8拍に割り付けたリズム)といった能の拍子をもとに、鼓のリズムをオーケストラに織り交ぜることで、能の世界観を巧みに映像と融合させている。

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