ケーンの生涯を体現するウェルズの演技に注目〜演技の魅力
本作の注目は、なんといっても主人公演じるケーンの演技だろう。撮影時、ウェルズは弱冠25歳。しかし、本作では子ども時代を除き、一人でケーンを見事に演じ切っている。
例えば、年月を隔てて計6回繰り返されるケーンとエミリーの朝食のシーンでは、2人の関係性が悪化していく様子をセリフと間で巧みに表現。晩年のシーンでは、『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドすらほうふつとさせる貫禄たっぷりの演技を見せている。
また、本作の脇を固めるのが銀幕のスターたちではなく、ウェルズが設立したマーキュリー劇団のメンバーたちというのも興味深い。彼らがお互いに会話を被せ合いながら話し合う場面は、演劇らしいリアリティに溢れている。
なお、ケーンの親友・リーランドを演じるジョゼフ・コットンは、その後『第三の男』や『疑惑の影』にも出演。ハリウッドを代表する俳優に成長する。
ちなみに余談だが、本作の主人公・ケーンには実在のモデルがいる。ハースト・コーポレーションの創業者で、“新聞王”の異名で知られたウィリアム・ランドルフ・ハーストである。
ハーストは、本作の撮影中に自らがスキャンダラスに描かれている事実を知り、持てる影響力の全てを行使して本作の公開を妨害した。その結果、本作の公開館が大幅に減らされたほか、アカデミー賞も9部門にノミネートされながらも脚本賞しか受賞できなかったという。この一連の妨害工作は、今日に至るまでアカデミー賞最大の汚点と呼ばれている。