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細やかな仕事で映像を盛り上げる楽曲〜音楽の魅力

音楽について語る前に、まずは本作の音響の演出について紹介したい。『地獄の黙示録』などの編集で知られるウォルター・マーチは、映画の音響技術についてのドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』において、本作の音響の革新性について述べている。マーチによれば、ウェルズはラジオの世界から映画の世界へ「音の空間性」という新たな音響技術を持ち込んだのだという。

例えばトンプソンたち記者がウェルズの資料を漁るためにサッチャー図書館に向かうシーン。トンプソンたちの足音が反響し、空間全体の大きさを演出しているが、実はこの空間はセットで、反響音は後から入れられたものだという。つまりウェルズは、パンフォーカスで空間の奥行きを表現したのと同じように、音を反響させることで空間の奥行きを表現したのである。

さて、話がだいぶそれてしまった。本作の音楽を手がけるのはバーナード・ハーマン。『サイコ』や『北北西に進路を取れ』など、数多くの映画音楽を手掛けてきた巨匠である。

バーナード・ハーマン
バーナードハーマンGetty Images

ハーマンは本作で、快活なダンスミュージックや豪奢なオペラなど、さまざまな楽曲に挑戦。とりわけ冒頭のザナドゥ城のシーンで流れるサスペンス風の楽曲は、城内の明かりが消える、ケーンが持っていたガラス玉が割れるなど、映像の展開ともリンクし、繊細な仕事で映画全体を盛り上げている。

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