マフィア映画史を塗り替えた傑作ー演出の魅力
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)でアカデミー賞監督賞最多となる10度目のノミネートを果たしたマーティン・スコセッシ。そんな彼の生涯最高傑作ともいえる作品が『グッドフェローズ』だ。
原作は1950年代から80年代にかけてニューヨークを拠点に活躍したマフィア、ヘンリー・ヒルの半生を描いたニコラス・ピレッジの同名ノンフィクション小説『Wiseguy(邦題:ワイズガイ-わが憧れのマフィア人生-)』で、脚本はビレッジとスコセッシが担当。主人公のヘンリーを『サムシング・ワイルド』(1986)のレイ・リオッタが演じる。
タイトルの「グッドフェローズ(Goodfellas)」は「気のおけない親友」という意味で、転じて「信頼できる同胞=絶対に口を割らない仲間」を意味する。本作では、この言葉を「フリ」として、「グッドフェローズ」たちの欲望と裏切りに満ちた血で血を洗う生活をリアルなタッチで描出。あまりにも生々しいシーンの連続に試写会では途中退出者が続出したという。
しかし、本作は公開後、批評家を中心に高評価を獲得。現在はギャング映画屈指の名作として知られており、アメリカ映画協会(AFI)が2008年に発表した「アメリカ映画名作ランキング ギャング映画編」では『ゴッドファーザー』に次いで第2位に選出されている。
また、1991年の第63回アカデミー賞では3部門にノミネート(作品賞、監督賞、助演女優賞)され、助演男優賞を受賞(ジョー・ペシ)。さらにヴェネツィア国際映画祭では監督賞にあたる銀獅子賞を受賞している。
『タクシードライバー』(1976)や『レイジング・ブル』(1980)など、時代ごとに名作を生み出してきたスコセッシ。本作は、そんなスコセッシの1990年代を代表する作品であるとともに、ギャング映画の金字塔でもあるのだ。