イカれた男たちの狂騒ー配役の魅力
本作の配役といえば、まずはジミー役のロバート・デ・ニーロを挙げなければならない。『タクシードライバー』(1976)、『レイジング・ブル』(1980)、『キング・オブ・コメディ』(1982)と、「スコセッシファミリー」の一員として数々の映画に出演してきたデ・ニーロ。本作では、ヘンリーの兄貴分ジミーとして、貫禄のある演技を披露している。
なお、デ・ニーロといえば、やはり『ゴッドファーザー PART Ⅱ』での若かりし頃のヴィトー・コルレオーネ役を忘れてはならない。本作で一躍スターダムにのしあがったデ・ニーロだけに、本作での起用には従来のギャング映画を換骨奪胎しようとするスコセッシの強い意志が感じられる。
また、本作でフレッシュな演技を披露したヘンリー役のレイ・リオッタは本作が出世作となり、その後多くのサスペンス作品に出演している。生後間も無く孤児院に預けられ、アメリカ人に育てられたというリオッタだけに、ヘンリーの役に少なからず親近感を感じていたのは想像に難くないだろう。
そして、作中でとりわけ異彩を放っているのが、トミー役のジョー・ペシだ。『ホーム・アローン』シリーズ(1990〜)のマヌケな泥棒ハリー役で知られるジョーだが、本作では冗談半分で人を殺していく狂った男を怪演。アカデミー賞助演男優賞の受賞もうなずけるキャリア最高の演技を披露している。
ジョーの出演シーンで特に印象的なのは、飲みの席で突然キレ出すシーンだろう。それまで、穏やかに談笑していたにも関わらず、ふとした拍子に突然激高し周りを凍り付かせる。どこに地雷があるか分からない、そんな得体の知れなさを見事に表現している。
また、本作は、一般的なギャング映画とは異なり、女性の心情がしっかりと描かれている点も大きな特徴だ。特にカレン・ヒル役のロレン・ブラッコは、ヘンリーに振り回される女性の悲哀を、実に感情豊かに演じている。