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ポップなヒットナンバーの応酬―音楽の魅力

マーティン・スコセッシ監督
マーティンスコセッシGetty Images

本作では、オリジナル楽曲が使われておらず、全編にわたりスコセッシ思い出のヒットナンバーが用いられている。こういった傾向は、デ・ニーロ主演のギャング映画『ミーン・ストリート』(1973)以降のスコセッシ作品で散見される特徴だ。

このうち、とりわけ有名なのは、ジミーによるギャングたちの粛清シーンで用いられるデレク・アンド・ドミノスの「いとしのレイラ」だ。

「いとしのレイラ」といえば、エリック・クラプトンのかき鳴らすようなギターリフが印象的だが、本作で用いられるのはジム・ゴードンの感傷的なピアノパートのみ。しかも、本シーンでは、この曲をバックに車内、食肉用の冷凍庫、ゴミ収集車の中とギャングたちの死体が矢継ぎ早に映される。美しいピアノの旋律と陰惨な死体の数々は、一度見ると脳に焼きついて離れない。

また、エンディングを飾るのはシド・ヴィシャスの「マイ・ウェイ」。マフィアから普通の生活へと戻ったヘンリーと、本曲の疾走感のコントラストが効いており、最後を飾るにはぴったりの曲に仕上がっている。

なお、スコセッシは、本作のドキュメンタリーで、映画と音楽の関係について「聴いている音楽と窓の外の景色との対置」であると述べている。音楽の使い方にもスコセッシ流の哲学が貫かれているのだ。

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