”ドキュメンタリー志向”のホラー映画ー脚本の魅力
本作の怖さの理由は、リアリティにある。
作品の冒頭で「これは5人の若者の身に起きた悲劇の物語である」から始まる紹介文が流れる。この文章により、観客は本当にあった出来事のドキュメンタリーとして本作を鑑賞することになる。
加えて、おおまかな設定のみを決め、細部を現場でつめていくというスタイルも、本作のリアリティに大きく貢献している。スタッフやキャストがあらかじめ作り込んでいないため、現場での生の恐怖感がそのまま作品に反映されるのだ。
本作が描く、最大の恐怖、それは、チェーンソーをぶん回して追い駆けてくる「レザーフェイス」だろう。
低予算で勝負をかけようとするフーパーは、彼の処女作『Eggshels』の出演者であったキム・ヘンケルと共同で脚本を共同で執筆。執筆にあたっては、フーパーが親戚から聞いた怖いうわさ話や、実在の連続殺人鬼エルマー・ウェイン・ヘンリーの人物像をもとに、「レザーフェイス」の殺人鬼像を構築していったという。
なお、「人間の皮をかぶった殺人鬼」というアイデアを聞くと、おそらく1950年代にアメリカを恐怖に陥れた連続殺人鬼エド・ゲインを連想する人も多いことと思う。
死体の骨や皮から衣服や調度品を作っていたという聞くだに恐ろしいこの殺人鬼は、聞くかぎり「レザーフェイス」のモデルなのではないかと疑ってしまう。しかし、実際にはフーパーらはこの事件を知らず、大学時代に教師が話した「死体の皮でハロウィンのコスチュームを作った」といううわさ話がもとになっているという。