俳優のホンモノの恐怖を引き出す演出ー配役の魅力
本作の”ドキュメンタリー志向”は、役者陣の演出にも表れている。
例えば、撮影期間中は、レザーフェイス役のガンナー・ハンセンを他の役者から隔離。レザーフェイスの登場シーンでは、彼らの目の前にいきなりレザーフェイスが登場するように仕組んだという。
また、”絶叫クイーン”であるマリリン・バーンズがレザーフェイスから命からがら逃げるシーンの撮影では、トピーから「背後から斬られるかも」と脅され、本気で走って逃げたのだという。彼は、役者陣を徹底的に追い込むことで”ホンモノの恐怖”を引き出していったのだ。
悲惨な目に遭ったのはバーンズだけではない。車椅子に乗った兄、フランクリンを演じたポール・A・パーティンは、なんと撮影期間中風呂に入らせてもらえず、食事も他の役者と一緒にとらせてもらえなかったという。劇中では、他のキャストがポールを腫れ物扱いしているが、これも出演者のホンモノの嫌悪感からくるものなのだ。
なお、本作に出演している俳優はみな地元テキサスの無名俳優だ。いわば「顔が割れていない」等身大の若者の出演により、本作のリアリティはより強まったといえるだろう。
本作で最もインパクトのあるキャラクターは、レザーファイスの祖父”グランパ”だろう。124歳という超高齢であり、見た目はほとんどミイラ。周囲の助けを借りずして移動することもままならない、ほとんどオブジェのようなキャラクターだが、どこかユーモラスな佇まいで、張り詰めた空気を和ませる役割を果たしている。