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浮遊と落下ー映像の魅力

映画『ガープの世界』撮影現場にて
映画ガープの世界撮影現場にてGetty images

本作には、浮遊と落下のモチーフが随所に散りばめられている。

浮遊するモチーフで最も象徴的なのは、本作のポスターにも採用されている宙を舞う赤ちゃん(ガープ)のイメージだろう。

また、事故で目を負傷したダンカンが遊ぶ凧や、プーに打たれたガープを病院へと運ぶドクターヘリも浮遊のモチーフに含まれる。

一方、落下のシーンでまず挙げられるのが、空を見ながらパイロットごっこをしていたガープが、屋根から落ちそうになるシーンだ。

また、空中でピアノを演奏する男が飛び降りる『魔法の手袋』の中のシーンや、ガープとヘレンの新居にいきなり飛行機が突っ込むシーンも挙げられるだろう。

作中に頻出する「浮遊」と「落下」のイメージは、一体何を表しているのか。ヒントとなるのは、ガープ自身の次のセリフだ。

「過去の人生が1つの弧を描いていて、今の出来事が次の出来事に繋がっている、人生は一つの線であり冒険だ」

ここから考えると、「浮遊」は弧を描く行為であり、唐突な「落下」は弧を断ち切る行為だと言えないだろう。つまり、「浮遊」とは「生」のメタファーであり、「落下」は「死」のメタファーなのだ。

そして、この「落下」のメタファーの究極体が、プーだろう。

「プー(poo=大便)」と名付けられたこの惨めなキャラクターは、「ガープの世界」の外側から表れ、最終的に彼を死へと誘うことになる。

その証拠に、大便はひたすら便器に落下するのみで、決して浮遊することがない。つまり、「落下」を運命付けられた彼女の存在は、それ自体が唐突な「死」なのだ。

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