友情の裏切り?事件の裏に潜んでいた驚きの真実
『裏切者』シーズン5
放送日:2007年1月31日
脚本:櫻井武晴
犯人役:金田明夫
【神回である理由】
この作品の選出理由は“杉下右京×亀山薫の極致”だからである。
専業主婦の久美子がガンマニアの岩崎に殺害される事件が発生する。岩崎は3ヶ月前に猫を撃つ事件を起こし逮捕されていた。
出所後に自身を逮捕した池波署のサーバーをハッキングして事件解決の協力者であった久美子を逆恨みして今回の犯行に及んでいたのである。
しかし実は久美子は事件を目撃しておらず、池波署が捜査費を不正流用する為に名前と住所を勝手に使われていただけであった。
亀山の恩師で池波署課長の北村は部下達に特命係の持つ証拠を回収するように命じる。「この裏切者!」「警察官のクセに警察官を売りやがって!」激しい暴行と心ない言葉…証拠は奪われ亀山も病院へ運ばれる。
見舞いに現れた北村は亀山へ謝罪し、4歳の娘の写真を見せて、見逃してもらえないかと懇願。しかし被害者だった久美子の娘と会っていた亀山は涙を流しながら北村を断罪し、全部終わったらまた一緒に酒を飲もうと約束する。
美和子が記事を出した事で世論の批判が高まるが、警察は未だ責任を取ろうとしない。そこで右京は亀山暴行犯の指紋と不正書類の拇印の指紋が一致している点、久美子の遺族を焚き付ければ“情報公開法”で強制捜査が可能な点を指摘。
特に後者は警察庁長官の経歴に傷をつける恐れがある為、上層部は北村の処分に留める事で合意する。
亀山の退院に現れた小野田官房長は特命係の後姿を眺めながら美和子へ告げる。「僕はね。特命係は杉下が動かしているとばかり思っていました。でも実は君の旦那様だったんだね。亀山薫くん」
本作は亀山薫の人情と苦しみがこれでもかと描写されている。肉体が痛めつけられるのみならず、若手時代の恩師と敵対することで生じる心労や心ない言葉で精神的にも追い詰められるが、立ち上がる姿がカッコいい。
また亀山の想いを無駄にしない様に右京が頭脳を活かした手練手管で警察組織へ一矢報いるのも素晴らしい。
最後の小野田官房長の言葉を踏まえた上で、これまでの『相棒』や今後の『相棒』を観ると新たな解釈が可能にもなる。『相棒』は決して杉下右京の物語ではなく、2人の物語なのである。