第三話の犯人役・尾上松也(美容外科医)
『古畑任三郎』には、各シーズンに必ず一人、歌舞伎役者が犯人役として登場する。
シーズン1の第5話「汚れた王将」では、棋士・米沢八段役として故・坂東三津五郎(当時は坂東八十助)が登場。米沢の几帳面さが仇となるという本話の帰結は、三谷らしい実に味のあるものだ。ちなみに本話には、米沢を打ち負かした相手として藤井聡太そっくりの天才棋士が登場する。こちらも必見だ。
シーズン2の第7話「動機の鑑定」では、骨董商・春峯堂のご主人役として女形で知られる澤村藤十郎が登場。着物に身を包み、柔和な笑みを浮かべながら拳銃を握る姿は、女形である澤村でしか出せない不思議な色っぽさがある。なお、本話は、古畑が唯一推理を誤った事件としても知られており、シリーズ最高傑作の呼び声も高い回になっている。
シーズン3の第1話「若旦那の犯罪」では、歌舞伎界のプリンス・松本幸四郎(当時は市川染五郎)が落語家・気楽家雅楽役として登場。一般的に古畑と犯人の1対1で行われることが多い解決編だが、本話では例外的に古畑、師匠、雅楽の師匠の3者が登場しており、師匠・気楽家有楽(梅野泰靖)の涙の叱咤が胸を打つ話になっている。
そして極めつけは、スペシャル「すべて閣下の仕業」で特命全権大使・黛竹千代を演じた松本白鸚(当時は松本幸四郎)だろう。「『古畑任三郎』の決定版」として作られたという本作は、今泉や西園寺といった古畑の部下たちが出演せず、古畑と犯人の対決に重きを置いた重厚な人間ドラマに仕上がっている。
もし今の時代に古畑を復活させるなら、歌舞伎界からは尾上松也をキャスティングしたいところだ。役柄としては、痴情のもつれから患者兼恋人を殺害してしまう美容外科医などはいかがだろうか。
知的で派手な印象のある尾上。タワマンに住み、夜は外車で西麻布に繰り出すエリート医師をニヒルかつコミカルに演じてもらいたい。