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未完の原作を大きく飛躍させた巧みな物語展開〜脚本の魅力

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一見ハチャメチャな本作だが、意外にも脚本は巧みに練り上げられている。とりわけ注目なのは、後半以降のバトルシーンだろう。通行手形の制度撤廃をめぐり「埼玉解放戦線」メンバーと「千葉解放戦線」メンバーが対立し、そこから両者が手を組んで東京都内に攻め込んでいくのは、なんともアツい展開である。加えて、壇ノ浦百美と麻実麗の恋愛要素や麻実麗と阿久津翔によるBL要素も加わり、最後まで観客を飽きさせない。

また、原作コミックにはない「現実パート」が登場するのも大きな特徴である。具体的には、壇ノ浦百美や麻実麗の活躍が実は単なる「都市伝説」であり、埼玉在住のとある親子が埼玉のFMラジオ放送局「FM NACK5」の番組でこの物語を聞く、という設定が組み込まれているのである。このパートでは、埼玉出身の父親と千葉出身の両親が「都市伝説」の悲劇に共感し、“郷土愛”や都会へのコンプレックスにつなげる実に見事な構成である。

また、原作にも登場する「埼玉県人には、そこらへんの草でも食わせておけ!」をはじめとした、埼玉への辛辣な、しかし裏返しの愛に満ちた名セリフの数々も本作の見どころならぬ、聞きどころである。

なお、実は本作の原作コミックは未完で、物語はクライマックスを迎える前に終了している。つまり、「埼玉解放戦線」による革命以降の流れは、全て映画オリジナルなのである。尻切れトンボで終わった原作をこれほど壮大な作品に仕立てたのは、まさに脚本を担当した徳永友一の面目躍如といったところだろう。

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