格闘シーンは少ないが過激な描写がたっぷり…。
完全大人向けの「仮面ライダー」を令和に蘇らせたワケ
仮面ライダー生誕50周年作品で、庵野秀明が監督・脚本を務める『シン・仮面ライダー』が、3月18日から全国で公開中だ。
本作は、庵野氏が脚本などを務めた『シン』を冠とした2016年『シン・ゴジラ』(脚本・総監督)、2021年『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(企画・原作・脚本・総監督)、2022年『シン・ウルトラマン』(企画・脚本)に続き、「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」が手掛けた『シン』シリーズの5作目にあたる。
前3作はリメイク色が強い作品だったが、本作は、1971年からテレビ放送された『仮面ライダー』、石ノ森章太郎氏の原作漫画『仮面ライダー』を基にしながら描かれる「仮面ライダーシリーズ」のリブート(再構成)色が濃い一作となっている。
『シン』シリーズ、特に「ゴジラ」「ウルトラマン」に共通していることだが、庵野氏自身が特撮ファンであるがゆえに、思い入れが強く入り過ぎたこともあり、あまりにも大人向けの脚本にしたことで、原作を知る一部ファンからは批判も浴びている。
しかしながら、それは庵野氏の原作へのリスペストに加え、それらのヒーローを現代に蘇らせるという困難な試みに挑んだ結果であり、他の誰にもできない挑戦でもある。そして、「仮面ライダー」を令和の世に復活させようと、完成させたのが本作だ。
前提として、本作は、子ども向けの「特撮ヒーロー作品」ではない。ド派手な爆発も少なく、その昔、チビッ子を怖がらせ、かつ楽しませた、いわゆる“○○怪人”といったキャラクターも登場しない。
そもそも、仮面ライダーの最大の見どころであるはずの格闘シーンが決して多くない。その中には、仮面ライダーが殺めたショッカーから血しぶきが吹き出し、大量の鮮血がライダーの手袋にベッタリと付着する描写もあり、PG12指定されているほど。
では、子供をターゲットにしないでおくことで、庵野秀明は何が描きたかったのだろうか。