庵野秀明が仮面ライダーをダークヒーローとして原点回帰させたワケ
さらに、本作ではCGを活用しつつも、俳優自身がライダースーツを着て演技をするシーンが多い。普通、特撮ヒーローものでは、変身後のアクションはスーツアクター※が担当するのが通例だが、本作ではその多くを俳優がこなしている。
※着ぐるみを着用して擬斗やスタントなどの演技をする俳優にしてスタントマン。
また、仮面越しに漏れ聞こえる息づかい、仮面によってくぐもった声、スーツ越しでも伝わる身震いなど、仮面ライダーの一挙手一投足には、生の人間っぽさが濃厚に感じられるのだ。そうした“演出”は、本作が描く世界観とストーリー、そして仮面ライダーが“戦う意味”に大きな説得力を持たせている。
ストーリーは、バッタオーグとしての暴力性に抗い、人間であろうとする本郷の悲劇、SHOCKERに残る兄の暴走を止めようとするルリ子の葛藤、そんなふたりの絆が深まる過程が軸となっており、ダークヒーローとしての仮面ライダーを描こうとしていることがわかる。
「仮面ライダー=正義のヒーロー」と認識している人にとっては意外かもしれないが、本来仮面ライダーはダークヒーローからスタートしており、原作漫画も、TVシリーズの初期もその方向性だった。その点、本作は原点回帰しているのである。