宮崎駿のダンディズムー演出の魅力
本作は1992年公開の宮崎駿監督作品。月刊誌『モデルグラフィックス』に連載された「飛行艇時代」が原作で、戦間期のイタリアを舞台に魔法でブタに変えられた賞金稼ぎと空賊たちの争いを描いている。
宮崎が当初「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のための漫画映画」として企画していた本作。「カッコイイとは、こういうことさ」というキャッチコピー通り、本作の主人公マルコが多数の女性たちを口説きながらも、自らの美学を貫き仕事に邁進する姿は、まさに疲れた中年男性の理想像といえるだろう。
また、「飛ばねえ豚は、ただの豚だ」をはじめ、キャラクター同士のウィットに富んだやり取りも本作の魅力。手に汗握る冒険活劇と並行して、宮崎自身のダンディズムが全編に溢れている快作に仕上がっている。
なお、本作はもともと30分の短編作品として発表される予定だったが、鈴木敏夫プロデューサーが日本航空の機内上映作品として企画を提案。その後、結局日本テレビが制作に名を連ねることになり、最終的に90分の長編作品として上映されることとなったという経緯を持つ。
そういう意味で本作は、数々の大作を手掛けてきた宮崎のボーナス作品であり、息抜き的な作品と言えるだろう。