ダイナミックな空中戦ー映像の魅力
本作の映像的な魅力といえば、なんといっても迫力あふれる空中戦のシーンだろう。ポルコやカーチスの戦闘機が白い雲を切りながら飛び交うさまは、実にダイナミック。パース※や色彩配置など、映像的な技巧が隅々まで駆使されているのも見どころだ。ジブリの中では比較的短い作品だけあって、全編に宮崎のこだわりが詰まっている。
※距離や位置関係によって被写体の形や大きさに変化をつけて、奥行きや空間を表現する技法。
また、飛行艇マニアである宮崎による、男心をくすぐる細部へのこだわりにも注目。カーチスの愛機「カーチスR3C-0非公然水上戦闘機」をはじめ、第一次大戦期に実際に使われた飛行艇がブラッシュアップされた形で多数登場する(ちなみに、ポルコの愛機「サボイアS.21試作戦闘飛行艇」は完全オリジナル)。特にポルコの回想シーンで登場する「飛行機の墓場」は壮観の一言だ。
なお、本作の制作時は、ジブリの主力だった美術監督の男鹿和雄と作画監督の近藤喜文が『おもひでぽろぽろ』(1991年)の制作で疲弊しており、作中に登場するピッコロ社よろしく女性アニメーターを多数起用。作画監督に賀川愛、美術監督に久村佳津が選出されている。特に賀川は本作のヒロイン・フィオのモデルとされており、のちに『千と千尋の神隠し』(2001年)でも作画監督に起用されている。