巨匠黒澤明による型破りな痛快時代劇ー演出の魅力
『七人の侍』(1954)で時代劇映画の決定版を世に送り出した黒澤。そんな黒澤が本作で描くのは、なんでもありの「理屈抜きに面白い」時代劇だ。
本作の前年に公開した『悪い奴ほどよく眠る』が興行的に失敗しヒット作を作らなければならなくなった黒澤は、「映画の面白さを思い切り出したもの」として本作の制作に着手。時代考証や武士社会の規範を無視し、大人も子供も楽しめる映画を作り上げた。
特に注目は三船敏郎演じる主人公、桑畑三十郎だろう。懐から出した手で顎をさすりながら勘案し悪党をバッサバッサと斬り倒していくさまは、なんともかっこいい。本作は時代劇映画であるとともに『座頭市』のようなヒーロー時代劇でもあるのだ。
また、本作は、『七人の侍』同様に海外で数多くリメイクされている作品としても知られている。特に著名なのが、セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』(1964)だろう。
ある町に流れ着いたさすらいのガンマンが町を牛耳る二大勢力と敵対するという本作は、そのあまりのそっくり具合に配給会社の東宝から著作権侵害で訴えられたことでも知られている(のちに和解)。なお本作は、『夕陽のガンマン』(1965)『続・夕陽のガンマン』と併せて「ドル箱3部作」として知られ、イタリア発の西部劇であるマカロニ・ウエスタンの嚆矢となった。
なお、本作の続編として翌年に『椿三十郎』が制作されている。本作とあわせてこちらも楽しんでもらいたい。