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“生命の進歩”を鮮やかに視覚化する驚異の演出とは?

演出中のスタンリー・キューブリック
演出中のスタンリーキューブリックGetty Images

かつてSF映画といえば子供向けの娯楽作品であり、芸術的な価値が認められることはなかった。そうした潮流を一新したのが、SF映画の金字塔として名高い本作である。科学的裏付けに基づいた宇宙空間のリアルな再現、コンピュータの反乱によって狂気に追い込まれていく人間描写は真に迫っており、公開から半世紀以上経った今でも変わらぬ輝きを放っている。

説明的なセリフを省き、臨場感のある映像で物語を推し進めていくスタイルによって、監督のキューブリックは“人類の起源と運命”という壮大なテーマを説得力豊かに描き出す。冒頭20分は人類誕生以前の地球の様子がたっぷり描写される。

人間が一切登場せず、ドラマが進展しないため退屈を誘う前半パートだが、モノリスに触れた猿が骨を投げ放つと、映像は劇的に切り替わり、宇宙を漂うディスカバリー号が映し出される。かけ離れた空間をダイナミックに接続することによって、“生命の進歩”という抽象的なテーマを鮮やかに視覚化する、映画史に残る名演出だ。

また、ボーマンが目の当たりにする超現実的な光景は、カラフルな光の波によって表現され、このサイケデリックな主観映像は7分以上も持続。ここでも物語性のない映像が延々と映し出され、観る者は忍耐を強いられる。

しかし、この延々と続く光のトンネルを抜けることによって、ボーマンは人ならざるものへと変化する。キューブリックはボーマンが目の当たりにした映像を省略せずに追体験させることによって五感に揺さぶりをかけ、観る者の感覚を変容させようとしているのだ。

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