新たなリアリズム映画の誕生
母スギョン役のヤン・マルボクと、娘イジョン役のイム・ジホの演技も必見だ。
特に、イム・ジホは、本作が長編デビュー作ながら、振り切った演技のマルボクに恨み言をぶつけたり懇願したりとさまざまな表情を見せる。なお、彼女は本作での演技が高く評価され、釜山国際映画祭で年間最優秀女優(Actress of the Year)賞を受賞している。
しかし、本作に欠点がないわけではない。例えば、母親のスギョンは娘への怒り一辺倒で、上映時間も長いため、少し辟易してしまう。
また、人間ドラマも希薄で、なぜスギョンがイジョンにそこまで敵意をむき出しにするのか、はっきりとした理由が示されているわけではない。
とはいえ、近年の韓国フェミニズムやシスターフッド映画の“次”をいく、新たなリアリズムを示した本作の意義は大きいだろう。新時代の風を、ぜひ映画館で感じてほしい。
(柴田悠)
【作品情報】
監督・脚本:キム・セイン
出演:イム・ジホ、ヤン・マルボク、チョン・ボラム、ヤン・フンジュ
2021年/韓国/韓国語/カラー/139分/1.85:1/5.1ch /DCP
英題: The Apartment with Two Women 日本語字幕:根本理恵/ 配給:Foggy
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