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ラブコメの名手リチャード・カーティスの手腕〜脚本の魅力

リチャード・カーティス
リチャードカーティスGetty Images

本作の脚本は突飛ではあるが、「目覚めたら世界が変わっていた」と言う設定自体はそこまで目新しいものではない。しかし、ラブコメの名手リチャードが手掛けているだけあって、随所に匠の技が光る魅力的な脚本に仕上がっている。

まず物語の構成について。本作では、いわば「恋をとるか、夢をとるか」の二者択一の間で揺れる主人公がドラマの軸となっている。これは『ラ・ラ・ランド』(2016 年)をはじめ、古今東西さまざまな映画の題材となっており、観客の共感を呼びやすいテーマである。一度しかない人生で、恋をとるのか夢を取るのか…。

本作の主人公ジャックは最終的に仕事を捨て、「普通の生活」に戻ることで幸せを手に入れている。これは、ごく普通の主人公の幸せの日常を描く『アバウト・タイム〜愛おしい時間について』(2013)とも共通するテーマである。

また、細かい部分の描写にも注目である。例えば、ジャックが事故に遭い入院しているシーンでは、ビートルズの楽曲『When I’m sixty-four』(名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録)をもじって、傍らのエリーに「64歳になった時も、僕を必要としているかい?」とうそぶくと、「どうして64歳なの?」と返される。

その後も、ささやかな違和感を積み重ね、最後に仲間たちに『イエスタデイ』を弾いたところで、はじめてジャックがビートルズのいない世界に来たことに気づく。なんとも巧みな仕掛けである。

また、ビートルズやコカコーラ、ハリーポッターなど、存在しないものをいちいちネット検索で確認するのも巧い。検索のトップに表示されるキーワードでひと笑い取れるからである。ちなみに、コカコーラを検索して先頭に出てくるのは「麻薬王クリストファー・コーク」。なんとも皮肉が効いたギャグである。

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