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公開後に火がついた不朽の名作~演出の魅力

スティーブン・キング【Getty Images】
スティーブンキングGetty Images

映画史上の名作には、2つの種類がある。1つ目は、公開当時から注目を集め、その後も名作として語り継がれる作品。そして、2つ目は、本作のように、公開当時はあまり注目を集めていなかったものの、その後「再発見」される作品だ。

本作は『グリーンマイル』(2000年)で知られるフランク・ダラボンの初の長編作品。エンドロールにて「アレン・グリーンを偲んで」とのメッセージが表示されることから、この人物をモデルとした実話が元なのでは?と誤解する人も存在するが、小説が原作のフィクション作品だ(アレン・グリーンはフランク・ダラボンの親友であり、本作の制作に携わったエージェントだった)。

原作はホラー小説界の巨匠スティーブン・キングで、彼が”非ホラー小説”として発表した『恐怖の四季』(1982年)所収の「刑務所のリタ・ヘイワースー春は希望の泉」が原作となっている(なお、「夏」の物語は1998年に『ゴールデンボーイ』として、「秋」の物語は1986年に『スタンド・バイミー』とし映画化)。

しかし、原作小説のモデルになったといわれる事件が存在する。1957年、フランク・フレッシュウォーターという男が自動車事故を起こして有罪判決を受け、保護観察中に逃亡。その後、2015年に捕まるまで56年間逃げ続けていたという事件だ。

ロベール・ブレッソン監督の『抵抗』(1956)、クリント・イーストウッド主演の『アルカトラズからの脱出』(1979)など、映画史において脱獄映画の傑作は枚挙にいとまがない。本作もそうした”脱獄モノ”の系譜に連なる作品だが、脚本・監督を務めたフランク・ダラボンは、主人公が脱獄に臨むアクションに描写を割くというよりかは、刑務所内の人間関係や人物描写を丹念に行う。

それによって引き立つのは、過酷な環境下でいかに希望を失わずにいるかといった倫理的な問題である。本作が、刑務所モノという特定のジャンルに収まらない普遍性を獲得しているのは、様々な価値観を持つ登場人物を巧みに配置し、衝突や融和を通じて、この世界の複雑さを描出する、ダラボンの手腕に拠るところが大きいだろう。

本作は公開当初、1995年の第67回アカデミー賞の7部門にノミネートされたものの受賞には至らなかった。また、『パルプ・フィクション』や『フォレスト・ガンプ』と公開期間が重なっていたこともあり、興行収入も1,600万ドルとあまり芳しくなかったという。

しかし、本作はその後口コミで話題を集め(背景にはレンタルビデオ文化の隆盛がある)、1995年には全米で最もレンタルされた作品と知られるようになる。また、2015年には、アメリカ議会図書館のアメリカ国立フィルム登録簿に「文化的、歴史的、芸術的に重要な映画」として保存が決定。名実ともに歴史に残る名画となった。

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