「宙を舞うビニール袋」の美しさー映像の魅力
本作で印象的なビジュアルイメージといえば、やはりバラの花弁を身にまとった裸身のアンジェラが挙げられるだろう。レスターの妄想パートで繰り広げられるこの映像は、アンジェラ役のミーナ・スヴァーリの美貌も相まって、なんとも美しいカットに仕上がっている。
なお、このシーンで出てくるバラである「アメリカン・ビューティー」は、作中のあちこちに登場しており、キャロラインの家の生垣にも植えられている。「アメリカの美」と銘打たれたこの花だが、根から徐々に腐っていく花とも知られており、まさにアメリカ社会の腐敗を描いた本作にはぴったりと言えるだろう。
さて、本作にはもうひとつ、「美」を表現したモチーフが登場する。それは、リッキーが撮影した「宙を舞う白い袋」だ。彼が「一番美しい作品」としてジェーンに見せるこの映像は、冬の木枯らしに吹かれるビニール袋を映したもの。なんの変哲もない映像だが、ビニール袋の動きも相まって、印象深い映像に仕上がっている。
本作に登場する人々は、みなそれぞれが思う美(=強さ)に翻弄されている。しかし、美は、決して理想の中にあるものではない。日常の中に目を向ければ、あちこちに美は溢れている。リッキーが撮影したビニール袋は、日常にありふれた美の象徴であるとともに、美や力に振り回される現代人の滑稽さを示しているように思える。
しかし、リッキーは言う。「すべてのものの背後には、生命と慈愛の力があって、何も恐れることはない」。窓辺で裸になってバーベルを握るレスターも、自らに暴力を振るうフィッツも、この世に存在するものは全て美しく愛おしいー。彼の言葉からは、そんな達観した視点が読み取れる。