パルプ・フィクション 脚本の寸評
タランティーノは盟友であるロジャー・エイヴァリーと共に書き上げた原案を元に、脚本を執筆。タイトルの「パルプ・フィクション」とは三文雑誌、大衆犯罪小説誌のこと。
アメリカの小説家・J・D・サリンジャーの手法にインスパイアを受け、一つのエピソードで主役を務める人物が、別のエピソードでは脇役に転じる、ユニークなスタイルを採用。独立したエピソードが個性豊かなキャラクター陣の活躍によって次第に一つの世界を作り出していく物語は方々から高く評価され、第67回アカデミー最優秀脚本賞を受賞した。
どのエピソードにおいても、パンプキン(ティム・ロス)とジョディ(ロザンナ・アークエット)、ヴィンセントとジュールス、ヴィンセントとミア(ユマ・サーマン)など、奇妙な2人組が形成され、彼/彼女らの会話が物語の主幹をなしている。
会話の内容は、サブカルチャーから宗教、世界史、地理、生物学、取るに足りない小話に至るまで多岐に及び、プロット(物語の筋)の説明義務を果たす気は微塵も感じられない。観客の笑いを誘発すると同時に、登場人物の人生観や性格を浮かび上がらせるセリフ表現は比類がないほど巧みであり、物語から自由になったキャラクターたちは、思い思いに個性の羽を広げる。
不慮の事故や偶然の出会いなど、よく観るとかなりご都合主義的ではあるものの、キャラクターの魅力がしっかりと描き込まれているため、観客は物語に興味を失うことなく、荒唐無稽な展開を安心して見守ることができるのだ。