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パルプ・フィクション 音楽の寸評

オリジナルスコアは使用されていないが、ロックンロール、サーフミュージック、ポップス、ソウルと多様なジャンルの既成曲が巧みなセンスで繋ぎ合わされることで、独創的な効果を発揮している。オツムの弱そうな一組のカップルが強盗を敢行する冒頭のシーンでは、ディック・デイルの唸るようなギターチューン『Miserlou』が鳴り響き、映画の幕開けをスタイリッシュに彩る。

ブッチがマーセルスに八百長をけし掛けられる場面では、アル・グリーンのソウルナンバー『Let’s Stay Together』が低い音量で流れており、シーン全体をクールに引き締める。

また、ヴィンセントがミアの家を訪れるシーンで使用されるのは、イギリスのポップシンガー・ダスティ・スプリングフィールドの『Son of a Preacher Man』。「真面目な牧師の息子が女性を誘惑する」という物語を持つこの曲の歌詞は、ボスに忠実なヴィンセントが、その愛人であるミアの挑発を受け、欲望を揺さぶられていくという展開にマッチしているのだ。

ディスクジョッキーのような手つきでお気に入りの楽曲をシーンに当てはめていくタランティーノのセンスは、本作で早くも完成の域に達している。

《主な使用楽曲》
アル・グリーン『Let’s Stay Together』
ディック・デイル&デル・トーンズ『Miserlou』
チャック・ベリー『You Never Can Tell』
ダスティ・スプリングフィールド『Son of a Preacher Man』

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