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ブラック・スワン 脚本の魅力

3大バレエの一つ『白鳥の湖』をモチーフにした作品であり、舞台制作の裏側を描く「バックステージもの」の一種である。序盤から中盤にかけて本番に向けた準備プロセスを描写し、舞台本番をクライマックスに据えるドラマティックな構成を持ち、最後まで安心して楽しめる。

主人公が狂気に晒されながらも、時を追うごとに一流のバレリーナに成長していく過程に加え、挫折した踊り子である母・エリカとの葛藤も丹念に描写されている。エリカは自身の叶わなかった夢を娘に仮託しており、ニナのメンタルを追い詰める原因を形作っているのだ。

ラスト近くでは、舞台上のニナと客席で涙を流すエリカが交互に示されることで、親子間の葛藤はポジティブな形で解消され、観る者の感情を揺さぶる。他方で、物語は終始「信頼できない語り手」であるニナの視点から描かれる。そのため、虚実入り乱れる展開がスリリングではあるものの、人間ドラマとしてはイマイチ奥行きを欠いている。

終盤の展開を例にとろう。ニナの腹部からの出血は火を見るより明らかだが、なぜか彼女以外、一向に気付かない。舞台が終わると、申し合わせたように出血が広がり、周囲は初めてニナの異変に気づくのだが、かなりご都合主義的である。

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