原作未読の状態で実写版を観るべきワケ
さて、Netflix版『三体』はどうだったのか。
まず先に言っておこう。原作を未読の人は、まずはこの実写ドラマ版を先に観ることをオススメする。ドラマは原作をベースにしつつもかなり脚本に手が加えられているために、原作を読んでからドラマを見ると逆に混乱をきたしてしまうのだ。
なかでも主人公には大きな変更が加えられている。例えば、原作第一作で主人公であったナノマテリアルの開発者で三体文明の存在を知るワン・ミャオは、Netflix版ではエイザ・ゴンザレス演じるオギー・サラザールとジェス・ホン演じる物理学者ジン・チェンの二人のキャラクターに分割されている。
また原作第二作の主人公で社会学者のルオ・ジーはNetflix版ではジョヴァン・アデポ演じる厭世的なソール・デュランドとなっていて、原作第三作に登場するユン・ティエンミンはアレックス・シャープ演じる教師のウィル・ダニングとなっている。
そのほかにジョン・ブラッドリー演じるジャック・ルーニーを含めて、この5人の科学者たちがNetflix版ではオックスフォード5(ファイブ)として主人公に据えられているのである。
ドラマ版は原作で一人の人物が二人になっていて、また、自分名も変更しており、第二作、第三作で登場する主人公たちがドラマでは第一話から全員登場する。すでに原作を読んでいる者からすると、ドラマと原作を照らし合わせる作業に気を取られ、物語をスムーズに咀嚼できないのである。
一方で、実写版の制作陣には、上記のような原作からの変更ポイントを加えた明確な狙いがあったように思える。それは一体何か。