陽気な往年のラグタイムの名曲―音楽の魅力
本作をコメディたらしめているのは、映像表現だけではない。黒人作曲家スコット・ジョプリンによるラグタイム(黒人音楽をもととした音楽ジャンル)の陽気なムードも作品世界に大きな影響を与えている。
特に注目は、オープニングで用いられる『ジ・エンターテイナー』だろう。ピアノの陽気な音楽とどこか陽気で間の抜けたメロディがオープニングの挿絵と見事にマッチしており、本作のコメディテイストを見事に印象付けている。
なお、いまやブラスバンドやテレビのCMとしておなじみの本曲だが、本作での起用がきっかけで一躍有名になり、ビルボードの全米シングルチャートでは4位を記録。また、作曲者であるジョプリンも忘れられていた存在だったが、本作をきっかけに再評価され、1976年には特別ピューリッツァー賞を授与されている。
また、フッカーがゴンドーフのかつての仲間たちを誘うシーンで流れる音楽は、同じくジョプリンの『パイン・アップル・ラグ』。軽妙なピアノのメロディがテンポよく切り替わるシーンと見事にマッチしており、まるでコントの一シーンのようにも感じられる。
なお、本作で編曲を担当したマーヴィン・ハムリッシュは、本作でアカデミー賞の編曲賞を受賞。彼は、アカデミー賞の他にグラミー賞、エミー賞、トニー賞、ゴールデングローブ賞、ピューリッツァー賞を受賞しており、ハリウッドを代表する作曲家として歴史にその名を刻んでいる。
【関連記事】
映画史に残るラスト…どこがスゴい? 主人公のモデルは? 映画『明日に向かって撃て!』徹底考察。心に残る名言と主題歌も解説
映画「時計じかけのオレンジ」気持ち悪いけどクセになる史上屈指のカルト映画。実はコメディ?<あらすじ 考察 解説 評価>
タイトルの意味は…? チーフはなぜ心変わりした? 映画『カッコーの巣の上で』徹底考察。トラウマ級のロボトミー場面も解説