“絶妙にミスマッチ”なキャスト陣ー配役の魅力
本作の主人公エリオット・ムーアを演じるのは、マーク・ウォールバーグ。『ブギーナイツ』や『ザ・ファイター』(2010年)など、悲劇からコメディまでさまざまな映画に出演してきたハリウッドの名優だ。
しかしこのマーク、本来は自他共に「肉体派」俳優として知られ、ボクサーや軍人など、「戦う男」の役を演じることが多いとされる。そのため、本作の知的なエリオットの役柄はいささかミスマッチな感が否めず、なんとなく胡散臭さが感じられる。とはいえ、このキャスティングは、良い意味で本作が醸し出す不安感や違和感を高めることに寄与し、観客に居心地の悪い思いをさせることに成功している。
こういったキャスティングの据わりの悪さは、ウォールバーグだけではない。妻のアルマ・ムーア役を演じるズーイー・デシャネルや、ジュリアン役のジョン・レグイザモも、どことなく心の内側を読めないような不安感が感じられる(シャマラン自身の撮影の効果も多分にあるだろう)。
なお、レグイザモは普段異常なキャラクターを演じることが多く、本作で久しぶりに普通の人物を演じることになった。異常なキャラクターが似合う役者に普通の役柄を演じさせるのも、シャマランの戦略なのかもしれない。