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両親と別れるシーンで必ず涙する

『異人たちとの夏』(1988)

大林宣彦
監督の大林宣彦Getty Images

上映時間:108分
監督:大林宣彦
原作:山田太一
キャスト:風間杜夫、秋吉久美子、片岡鶴太郎、永島敏行、名取裕子、入江若葉、林泰文、奥村公延、原一平、栩野幸知、角替和枝、柳家三吉、桂米丸、笹野高史、ベンガル、川田あつ子、飛鳥尚、中山吉浩

【作品内容】

ドラマのシナリオライターの原田英雄(風間杜夫)は、幼少期を過ごした浅草で、交通事故で亡くなってしまった両親と再会する。同じマンションにする女性の桂(名取裕子)と恋人関係にもなり、原田は過去と決別するため両親との別れを選択する。しかし桂も幽霊であった事実を知り、友人の間宮(永島敏行)の助けを借り危機を脱し、両親へ花と線香を手向け、新たな人生を歩み出す。

【クライマックスは…】

昼間は両親の元へ行き、夜は自宅で桂と愛し合う日々が続き、疲れが溜まっていた。テレビ局では、やつれた原田を見て、みんなが心配していた。心配になった桂に問い詰められた原田は、死んだ両親に会いに行っていることを打ち明ける。桂は、死んだ人間に会いにいくことで精気が吸い取られ、このままでは原田の命も危ないことを告げる。

原田は両親に会いに行き、3人は最後のひと時ですき焼きを食べ、両親は消えてしまう。両親の割り箸を自宅に持ち帰り、桂の部屋に戻る。やつれていく原田が心配な間宮は、原田の元に訪ねてくるが、桂の部屋にいたのは瀕死の原田と幽霊の桂だった。桂は消え、原田は間宮と両親の実家があった場所へ行き、二人の割り箸を燃やす。

【注目ポイント】

終盤、浅草のすき焼き屋で原田が亡き両親と、生前は叶えることができなかった家族水入らずの夕食シーンがあるが、店内の灯りが優しく包む中、原田が両親への感謝と別れを静かに伝え、両親の姿が徐々に消えていく様子は、観客の心に感動と切なさと解放感を与えてくれる。

別れの後、原田は両親への最後の敬意として、墓に花と線香を捧げるのだが、この原田の行為は、過去の後悔からの解放と、未来への新たな歩みを象徴している。

この瞬間、原田の顔には言葉では表現しがたい平穏な表情が現れ、観客を更なる感動の渦へと巻き込むのである。

加えて、このラストシーンは単なる感動だけではなく、「人間はどんな時でも過去の後悔を乗り越え、新しい人生を歩むことができる」ということを観客へ訴えかけており、自分自身の人生と向き合うことの大切さを表現している。

本作は、単なる両親の幽霊と家族団欒のひと時を過ごす、というヒューマンドラマだけではなく、過去の後悔を乗り越えること、そして新しい人生を歩むことの大切さを教えてくれる名作だ。特に原田が両親と別れるラストシーンは、涙なくして観ることはできないだろう。

(文・ニャンコ)

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