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リアルな描写に潜む狂気ー映像の魅力

エグゼクティブプロデューサー滝山雅夫(左)、監督の今敏(中央)、エグゼクティブプロデューサー丸田順悟(右)
エグゼクティブプロデューサー滝山雅夫(左)、監督の今敏(中央)、エグゼクティブプロデューサー丸田順悟(右)【Getty Images】

本作には、観客の脳裏に焼き付くようなインパクトのある絵があちこちに散りばめられている。小柄な島所長が、窓を突き破って外に飛び出す絵や、時田がエレベーターに挟まった絵は、一度見ると忘れられない。

今の映像表現は、しばしば観る者から「トラウマになる」といった感想を引き出すが、それはその独創性に対する賛辞に他ならない。実際、今の表現は『ブラックスワン』や『ザ・ホエール』のダーレン・アロノフスキー、前述のクリストファー・ノーランなど、ハリウッドを代表する“映像派”の映画監督から絶大な支持を受けている。

今の作品は、なぜこれほどインパクトがあるのか。それは、描写の不気味さにあるだろう。本作に限らず、今の作品にはレイアウトの段階から人物のデッサンや空間描写などにこだわり、徹底したリアルさが追求されている。

しかし、今が追求するのは、現実そのままの風景ではなく、むしろ「現実の違和感」にある。確固たる現実が歪み、虚構であったことが露わになる瞬間。そこにこそ今の作品たる所以があるのだ。

また、現実の違和感という意味では、島所長をはじめ、精神錯乱に陥った人々の虚ろな目つきも印象的。普通の人物と何も変わらないが、狂気に魅入られており、実はその目には何も映っていない…。そんな微妙な不気味さの表現がなんとも上手い。

なお、本作の作画監督は、『もののけ姫』(1997年)や『千と千尋の神隠し』(2001年)の作画監督を担当した安藤雅司が担当。スタジオジブリを支えた匠の技術が、本作を傑作たらしめている。

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