戸田彬弘監督率いる劇団チーズtheaterの戯曲『川辺市子のために』を映像化した映画『市子』が現在公開中だ。日本を代表する名女優である杉咲花が主演を熱演したことで話題を集めている今作。今回は、作品の魅力と共にラストシーンについて徹底的に考察していく。（文・タナカシカ）【あらすじ　キャスト　解説　考察　評価　レビュー】

※本レビューでは映画の内容についてネタバレがあります。鑑賞前の方はご注意ください。
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誰しもが持つ、誰にも言えない「悩み」と「秘密」

「本当の彼女を誰も知らない」というキャッチコピーにあるように、今作はプロポーズされた川辺市子（杉咲花）が翌日突然失踪し、婚約者である長谷川義則（若葉竜也）が彼女を探すために市子の過去を探るストーリーだ。

今作は、監督の戸田彬弘が率いる劇団チーズtheaterの戯曲『川辺市子のために』が原作となっている。この舞台は予約発売時点にて完売し、劇場や観客からの熱い要望を受け2度再演されるほど話題となり、その年のサンモールスタジオ剪定賞2015において最優秀脚本賞を受賞した。

プロポーズのシーンから分かるように、慎ましくも幸せに過ごしてきた2人。そして長谷川の愛の言葉に、これ以上ないくらいの笑みを返した市子の目から、大粒の涙がポロポロと流れ落ちる。

しかし、幸せも束の間、翌日目覚めると市子は居らず、途方に暮れていた長谷川の元へ刑事（宇野祥平）が市子のことを調べにやってくる。そこで、刑事からの市子についての質問に、3年も付き合い同棲もしていた長谷川は市子の交友関係はおろか、出身地さえ知らなかったことが明らかとなる。

ここから、知られざる市子の過去に迫るのだが、長谷川はこれまで関わってきた人物に話を聞くが、その過程でまったく知らなかった市子の人物像が浮かび上がる。ミステリータッチで話が進むため、見ている側も考察をしながら楽しむことができる作品となっている。

まず一番初めに伝えたいことがひとつある。今作で何度も出てくる「虹」の存在だ。作品をこれから観る人は、是非「虹」に注目してほしい。これは市子の感情が揺れ動く時に現れているのだ。