「動の暴力」と役者の顔面力ー映像の魅力
先述の通り、本作の暴力描写は、従来の北野映画の暴力描写とはタッチが大きく異なる。北野映画では、棒立ちのヤクザたちが黙したままガンを飛ばし合う中で、突発的に起こるという「静の暴力」が描かれてきた。一方、本作のヤクザたちはみな終始ひたすら怒号を飛ばしあっており、暴力もその延長線上で起こる。いわば「動の暴力」だ。
また、それに伴い、映像表現も大きく異なる。従来の北野映画では、どちらかというとロングショットが多く、風景と暴力が地続きに描かれていた。一方、本作の場合は、役者の顔をアップで写したショットが多い。年季の入った役者たちが、眉間に皺を寄せて口角泡を飛ばし合う姿は実に壮観だ。
そして、随所に登場する黒塗りの車もまた本作の重要なモチーフだ。最も印象的なのは、本作のオープニングだろう。山王会の会合のシーンが終わり、ヤクザたちが帰路に着くシーン。カメラは、山間の一本道をかなり高い位置から映している。この一本道を、黒塗りの車5台が画面手前に向かって走り抜けていく。そして、しばらく経ってから、車がもう2台走ってくる。重なるモノローグから、この車が池元と大友のものであることがわかる。
そして、車が画面手前に近づくと、カメラは車体をフォローし、車の屋根を真上から捉えたところで、「OUTRAGE」というタイトルが赤字で表示される。今後の展開を予感させる、なんとも粋なオープニングだ。
なお、続編の『アウトレイジ ビヨンド』では、車が海中から引き上げられるシーンで、そして『アウトレイジ最終章』では、大友が韓国の夜の歓楽街を黒塗りの車で移動するシーンでそれぞれタイトルが表示される。こういった演出は、車がヤクザたちのステータスを象徴するツールであることを如実に表している。