物語を盛り上げる魅力的な“ジジイ”キャラたち
『ドラゴンボール』との類似点は他にもある。たとえば、ベルゼブブの父親であるサタンは、『ドラゴンボール』魔人ブウ編に登場する、魔界の王・ダーブラに酷似している。
この類似点に関しては、原作の『SAND LAND』が発表された当時、「ベルゼブブって、ダーブラの息子なの!?」と、『ドラゴンボール』と世界線がつながっているのではかと考察したファンの声も多く聞かれたが、作者によれば、「最上位の悪魔はこのようなイメージ」とのことで、特につながりはないようだ。
また、ジジイキャラとして、もう1人、注目キャラクターを挙げたい。ベルゼブブのお目付け役の魔物・シーフである。
そもそも、このキャスティングに違和感を覚えた人も多いのではないだろうか。
3人の冒険劇であれば、通常、このポジションは女性=ヒロイン枠である。そう、この物語には、ほぼ女性キャラが登場しないのだ。女性好き、セクシーシーン好きとして知られる鳥山明にしては、珍しい設定とも言えよう。
当初、悪魔+ジジイ2人というパーティーは、何ともバランスの悪さを感じさせるが、ストーリーが展開されるにつれ、自然と受け入れていき、しまいには「このパーティー、最高!」という感覚に浸れるのも本作の魅力の一つだろう。
共に旅をし、戦車に乗り、国王軍に対し共闘するラオとシーフの間に大人の友情が芽生えてくる様子が実に微笑ましいのだ。
「シーフ、操縦を代われ!」と、砲撃に集中するラオ。
「なんで、わしが…」と、アタフタしながら操縦をしながら、戦車を扱うことが次第に楽しくなってゆくシーフ。
このジジイ2人の戦友と呼ぶにふさわしい関係性を、鳥山明は、『SAND LAND』を通じて、一番描きたかったものなのではないだろうか。