主人公・コブの内面を表現するエディット・ピアノの歌唱曲
本作の音楽で最も印象的なのが、コブたちが夢から目覚めるシーンで合図として用いられる、あの謎の曲だろう。この曲の正体はフランスを代表するシャンソン歌手エディット・ピアフが歌う『水に流して(Non, je ne regrette rien)』。この曲のタイトル、実は直訳すると「何も後悔していない」となる。少し歌詞を引用してみよう。
もういいのもう後悔しない
昨日のことは全て水に流そう
もういいのもう後悔しない
みんな今じゃ過ぎた昔の事
過去は全部焼き捨てたわ
思い出にも用はないわ
恋もすべてきれいにした
ゼロからまたやりなおそう
もういいのもう後悔しない
昨日のことは全て水に流そう
もういいのもう後悔しない
新しい人生が今日から始まるのさ
本作のラストでは、第三階層のさらに深層である「虚無(limbo)」に落ちたコブが、慚愧の念を抱いていた亡き妻・モブの幻影と決別するシーンが描かれている。そう考えると、『水に流して』はこの時のモブの心情を表している曲といえるかもしれない。
ちなみに、モブ役のマリオン・コティヤールは、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』(2007年)でピアフ役を熱演。米国アカデミー賞や英国アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞など、数々の賞を受賞している。
また、ノーマンは、本作のテーマ曲の制作にあたり、『水に流して』をアレンジするよう作曲家のハンス・ジマーに依頼。完成したテーマ曲では、スロー再生される『水に流して』の重低音と不協和音が観客の不安を喚起する曲に仕上がっている。
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