ホーム » 投稿 » 海外映画 » レビュー » 映画『インセプション』謎めいたラストシーンを解説。最後のコマが示す意味とは?<あらすじ キャスト 考察 評価 レビュー> » Page 7

主人公・コブの内面を表現するエディット・ピアノの歌唱曲

作曲を担当したハンズ・ジマー
作曲を担当したハンズジマーGetty Images

本作の音楽で最も印象的なのが、コブたちが夢から目覚めるシーンで合図として用いられる、あの謎の曲だろう。この曲の正体はフランスを代表するシャンソン歌手エディット・ピアフが歌う『水に流して(Non, je ne regrette rien)』。この曲のタイトル、実は直訳すると「何も後悔していない」となる。少し歌詞を引用してみよう。

もういいのもう後悔しない
昨日のことは全て水に流そう

もういいのもう後悔しない
みんな今じゃ過ぎた昔の事

過去は全部焼き捨てたわ
思い出にも用はないわ

恋もすべてきれいにした
ゼロからまたやりなおそう

もういいのもう後悔しない
昨日のことは全て水に流そう

もういいのもう後悔しない
新しい人生が今日から始まるのさ

本作のラストでは、第三階層のさらに深層である「虚無(limbo)」に落ちたコブが、慚愧の念を抱いていた亡き妻・モブの幻影と決別するシーンが描かれている。そう考えると、『水に流して』はこの時のモブの心情を表している曲といえるかもしれない。

ちなみに、モブ役のマリオン・コティヤールは、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』(2007年)でピアフ役を熱演。米国アカデミー賞や英国アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞など、数々の賞を受賞している。

また、ノーマンは、本作のテーマ曲の制作にあたり、『水に流して』をアレンジするよう作曲家のハンス・ジマーに依頼。完成したテーマ曲では、スロー再生される『水に流して』の重低音と不協和音が観客の不安を喚起する曲に仕上がっている。

【関連記事】
映画「ダークナイト」圧巻のジョーカー、なぜ人気抜群? 最高のバットマントリロジー<あらすじ 考察 解説 評価>
映画「メメント」時系列を整理すれば超わかりやすい! 賛否両論の難解映画。ラストの意味は? <あらすじ 考察 解説 評価>
映画『TENET テネット』史上屈指の難解映画をわかりやすく解説。未来人の目的は? 「アルゴリズム」の意味とは?

1 2 3 4 5 6 7
error: Content is protected !!