個性あふれる役者たち〜演技の魅力
本作には、失礼ながらあまりメジャーな役者が登場していない。しかし、群像劇らしく、みな個性豊かな演技を披露している。
一番の注目は、カーモディ役のマーシャ・ゲイ・ハーデンだろう。『ポロック 2人だけのアトリエ』(2000年)では献身的な女性画家を演じ、アカデミー助演女優賞を受賞している彼女だが、本作では新興宗教の教祖さなからの危機迫る演技を披露。中盤以降の演説シーンは独壇場と言ってもよく、観客である私たちも彼女の言葉に耳を傾けてしまう。
次に注目は、主演のデヴィッド役のトーマス・ジェーンだろう。
マーベル・コミックスの人気キャラクターを描いた『パニッシャー』(2004年)ではどこまでも暴力的なクライムファイターを演じている彼だが、本作では父性をまといつつも、そこはかとなく頼りなく絶妙に胡散臭い”ヒーローのまがいもの”(失礼!)とでも言うべきキャラクターを好演している。
また、本作の思わぬ収穫は、デヴィッドの息子・ビリーを演じるネイサン・ギャンブルの演技だろう。若干9歳ながら、不安の中デヴィッドやアマンダにすがる子どもを巧みに演じている。特に、薬局へ向かおうとするデヴィッドとの別れを惜しみ泣きじゃくる彼の演技は必見である。