不安を煽るデッド・カン・ダンスの楽曲〜音楽の魅力
本作の音楽を担当するのは、マーク・アイシャム。映画音楽を本領とするトランペット奏者・シンセサイザー奏者であり、本作のほかには『クイズ・ショウ』(1994年)や『告発のとき』(2007年)の音楽も手掛けている。
しかし、本作で用いられるアイシャムの音楽は、どちらかといえば月並みな映画音楽といった趣なのは否めない。むしろ注目は、随所に用いられる挿入曲だろう。
例えば、虫型のクリーチャーがスーパーマーケットの窓に張り付くシーンで用いられる『Apollo To The Rescue』。この曲は、TVシリーズの『Battlestar Galactica』の挿入歌だが、四つ打ちのドラムのリズムが観客の不安を煽る。
極め付けは、エンディングテーマとして使用されるデッド・カン・ダンスの『The Host of Seraphim』だろう。
デッド・カン・ダンスは民族音楽や宗教音楽のエッセンスを取り入れた楽曲が魅力で、「ダークウェーブ」と呼ばれるジャンルの走りともいわれるバンドで、不気味でありながら聖歌のような荘厳な音色が、本作の絶望的なラストにピッタリなのである。
とはいえ、既存の曲を使っている時点で、やはり本作のチープ感は否めない。音楽にもっと力を入れていれば、本作はさらなる傑作になったことだろう。
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