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パンチドランク・ラブ 配役の魅力

主役のバリー・イーガンを演じたアダム・サンドラーは、10代の頃にボストンのコメディクラブで研鑽を積んだ生粋のコメディアンである。本作では抑うつ的でキレやすい反面、愛する者のためなら危険を顧みないピュアな心の持ち主である主人公を熱演。良い面と悪い面を併せ持った主人公を味わい深いキャラクターに昇華し、コメディ作品以外でも活躍する足がかりとなった。

映画『パンチドランク・ラブ』の1シーン。バリー役のアダム・サンドラー
映画パンチドランクラブの1シーンバリー役のアダムサンドラーGetty Images

リナとの初対面のシーンでは、去っていく彼女の後ろ姿を控え目な様子で眺めていると、不意に振り返られてドギマギする姿が可笑しい。誰もいない部屋の隅っこに身を寄せたり、駆けつけたパーティー会場で自身の悪口が聞こえ、玄関を出たり入ったりする動きにも可笑しみと悲哀が宿っており、天才コメディアンならでは技芸が光る。

ヒロインのリナに扮するエミリー・ワトソンは、ラース・フォン・トリアー監督『奇跡の海』(1996)で神に忠誠を誓う女性を演じて一躍脚光を浴びた。風変わりなバリーを一途に思い続けるリナと『奇跡の海』の役柄は共通した雰囲気をまとっており、ハマり役と言う他ない。

PTA作品に初参加となるアダム・サンドラー、エミリー・ワトソンに加え、PTA作品の常連俳優であるフィリップ・シーモア・ホフマンも“ゆすり屋”の男・ディーン役で出演している。電話越しにバリーと言い合う場面では、立て続けに10回近く「Shut up(黙れ)」と連呼。マーティン・スコセッシ監督の暴力映画も真っ青のエキセントリックな芝居で場面を盛大に盛り上げている。

また、バリーが心を許す数少ない存在である職場の同僚ランスに扮するのは、『ブギーナイツ』(1997)、『マグノリア』(1999)に続く出演となるルイス・ガスマン。人好きのする仏頂面で主人公に寄り添う姿はマスコットのようであり、作品全体を大らかなオーラで包んでいる。

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