アメリカの夜 音楽の魅力
音楽監督を務めたジョルジュ・ドルリューは、トリュフォー作品にはなくてはならない存在であり、戦後のフランス映画を代表する映画音楽の巨匠である。1970年代以降はハリウッドにも招かれ、ジョージ・ロイ・ヒル監督『リトル・ロマンス』では第52回アカデミー賞オリジナル作曲賞を受賞している。
美しく洗練されたサウンドには唯一無二の気品があり、後世の作り手にも影響を与え続けている。近年では、1970年生まれのウェス・アンダーソンは『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』(2021)でドルリューの曲を使用した。
オープニングクレジットにはオーケストラによる重厚な音楽が被さり、映画の幕開けを華々しく彩る。撮影シーンで流れるメインテーマ『グランドコラール』に心が踊らない映画ファンはいないだろう。そう思わずにはいられないほど、浮遊感のあるサウンドと俯瞰のアングルを多用したカメラワークとの相性は抜群である。
ジョルジュ・ドルリューによるサウンドトラックは、映画づくりに情熱をかたむける人々に崇高さを付与することに成功している。