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『マルホランド・ドライブ』【ネタバレあり】あらすじ

ハリウッドの大手映画制作会社の会議室では、人気映画監督であるアダム・ケシャー(ジャスティン・セロー)と、マフィアであり、映画の出資者であるルイージとヴィンチェンゾのカスティリアーニ兄弟が次回作について話し合っているところだった。

カスティリアーニ兄弟は、カミーラ・ローズという女優を主演に迎えるよう要求するが、アダムはそれを拒否する。会議室を出たアダムはカスティリアーニ兄弟の車のフロントガラスをゴルフクラブで叩き割ると、自分の愛車であるポルシェに乗って去っていった。

また別の古いビルではジョーという男と、エドという男が談笑しているところだった。しかし突然ジョーはエドを射殺し、その拳銃をエドの手に握らせて自殺を装い、“エドのブラックリスト”と書かれたノートを奪おうとする。

だが、誤射してしまった際に隣の部屋の女の尻にあたり、ジョーはその女と現場を目撃した清掃員の男を殺害してノートを奪って逃げる。

その頃、ベティはルースと電話で話をしているところだ。話の中でリタがルースの知り合いではないことがわかり、彼女を警察に突き出すよう指示されるが、ベティはひとまずリタから話を聞くことにする。

リタは自分が記憶喪失であることを告げるが、“マルホランド・ドライブ”という言葉だけは覚えていることを打ち明けた。そして、リタのバッグには大金と、謎の青い鍵が入っていた。

映画監督のアダムはマフィアの追っ手を振り切ると、ハリウッドを見渡せる高台にある自宅へ戻った。しかし自宅では妻が見知らぬ男と浮気しているところであった。

激怒したアダムは、妻の宝石箱にペンキを流し込んで仕返しをするが、妻とその浮気相手に殴られて家を追い出されてしまう。

アダムの家にたどりついたカスティリアーニ兄弟の部下は、アダムの妻とその浮気相手に追い返されそうになり、2人を叩きのめす。

ベティはリタの失われた記憶を取り戻す手伝いをしようと、公衆電話から警察に問い合わせるも、マルホランド・ドライブで事故が起きたということ以外、詳しい情報は得ることができなかった。

ベティとリタはレストラン「ウィンキーズ」で食事をしながら新聞を読んでいると、リタはウェイトレスがつけているダイアンという名札を見て、“ダイアン・セルウィン”という名前を思い出す。

それを聞いたベティは、リタの本名が“ダイアン”ではないかと思い込み、電話帳でその名前を調べると、ひとつだけ“ダイアン・セルウィン”と記された電話番号を見つける。

さっそく電話をかけるベティだったが、聞こえてきたのは留守番電話へ繋ぐアナウンスの声で、その声はリタのものではない。

ベティはリタを置いて外出するのにためらいをおぼえつつ、とある映画のオーディションに向かうことに。リタに帰ったらダイアンの家に行こうと言い残し、彼女に留守番を任せた。

アダムはとあるホテルに身を隠していた。製作途中だった映画はカスティリアーニ兄弟によって中断され、銀行口座まで凍結させられていた。

ピンチに陥っていたアダムは、カウボーイと呼ばれる男に夜の牧場へ呼び出される。カウボーイは「うまくやればもう一度私に会い、間違えたら二度会うことになる」とアダムに告げると、次回作のオーディションでカミーラを選ぶよう要求。その際、カウボーイは「人の態度はその人間の人生を決める」と不穏な警告を残すのだった。

映画のオーディションに参加したベティは気迫の演技を披露し、監督やプロデューサーから賞賛を浴びる。それを見たキャスティング担当のスタッフはベティにアダムを紹介した。

アダムはカスティリアーニ兄弟の圧とカウボーイの言葉もあり、不本意ながらもカミーラを主演に選ぼうとしているところだったが、ベティの芝居を見てベティこそ次回作にふさわしいと思いなおす。

ベティはアダムのことが気になったが、リタとの約束を守るために帰宅し、リタと共にダイアン・セルウィンの住所に向かった。たどり着いたのは古いアパートで、12号室のドアにはダイアンの名前が記されていたが、ダイアンはおらず、ダイアンと部屋を交換したと話す、別の女性が住んでいた。

女性が前に住んでいたという17号室に行ってみるが、呼びかけには何の応答も返ってこなかった。不審に思い部屋に入ってみると、部屋の中は腐敗臭が充満し、寝室には腐った女性の死体があった。

2人は帰宅するが、リタは激しく混乱していたため、自分で自分の髪の毛を切ろうとしてしまう。そんなリタをベティが慰めると、自分と同じ金髪でショートカットのウィッグをリタに被せた。

落ち着きを取り戻したリタは、ベティと同じベッドに入り、2人は深く愛し合うのであった。

夜も更けてきた頃、リタは「お静かに、楽団はいません」とうわごとをつぶやきだした。リタは突然ベティに「連れて行きたい場所がある」と言いだし、ハリウッドの端の小さな劇場「クラブ・シレンシオ」に連れていく。

ステージでは録音テープに合わせて、芸人がトランペットを演奏するフリをしていた。司会者が客席に向かって「お静かに、楽団はいません」と、謎めいた言葉を発して濃煙の中に姿を消す。

ステージの奥にある2階席には青髪のマダムが座っている。次に登場したのは“泣き女”という歌手で、この女が歌う悲しい歌を聴いて2人は涙を流す。その後、ステージに現れた司会者は「その歌声も全てまやかしだ」と言う。しばらくして、ベティはバッグの中に、いつの間にか青い小箱が入っていることに気付く。

帰宅したベティとリタは、青い小箱にリタが持っていた青い鍵を差し込もうとする。その瞬間、ベティはなぜかその場から姿を消す。仕方なくリタは1人で青い小箱を開けると、その瞬間、箱の中に吸い込まれてしまう。

それから、ルースが部屋に戻ってくる。しかし、その場にリタやベティの姿は見えず、青い小箱もない。

物語は急転直下する。今までの出来事は、無名の女優“ダイアン・セルウィン(ナオミ・ワッツ)”の夢の中の出来事であったようなのだ。

アパートの12号室で眠っていたダイアンは、外にいるカウボーイから声をかけられるも、目を覚まさない。そこに夢の中で12号室に住んでいた女に、部屋のドアをノックされる。目覚めたダイアンは部屋に彼女を入れると、女は自分の荷物を持ち出し、「2人の刑事があなたを探している」と言い残して去る。

気づくと、テーブルの上には青い鍵が置いてあった。

ダイアンが驚き、不安を感じていると、部屋に人気女優のカミーラ・ローズ(ローラ・ハリング)が入ってくる。カミーラは夢の中のリタにそっくりだった。ダイアンとカミーラは恋人同士である。2人は部屋でで深く愛し合う。

ダイアンとカミーラの出会いは次の通りだ。ダイアンは女優を目指して田舎からハリウッドに出てきたばかりの頃、名のある映画監督・アダムの新作オーデイションでカミーラと知り合った。同じく女優を夢見ていたカミーラは、このオーディションに合格し、ダイアンは脇役として出演。

ダイアンとカミーラは付き合うことになるが、この映画をきっかけに知名度を上げたカミーラはアダムとも付き合い始めていた。そんなカミーラはダイアンのことをだんだんと足手まといに思いはじめる。

そんな中、ダイアンは部屋で過ごしているとカミーラからの電話が鳴る。アダムが主催するパーティーに誘われたダイアンは、カミーラが手配した車に乗り込み、パーティー会場であるアダムの豪邸に向かった。道中、車はマルホランド・ドライブの途中で停まり、道路脇からカミーラが現れ、ダイアンの手を引いてアダムの家に連れていった。

パーティーには、アダムの母であるココもいた。ダイアンの夢の中でココは、アパートの管理人として登場していた。

そうしているうちに、カミーラはアダムと体を寄せ合ったかと思うと、別の女優とキスをしている様子をダイアンに見せつけ、ダイアンに自分が邪魔であることを気付かせようとするのであった。

カミーラへの怒りが湧き上がったダイアンは、「ウィンキーズ」で殺し屋のジョーにカミーラを殺すよう依頼。ここで働いていたウェイトレスの名札には“ベティ”と記してあった。

ジョーは仕事が終わったら渡すと言って、ダイアンに青い鍵を見せた。その鍵がなんなのか尋ねても、ジョーは答えなかった。

「ウィンキーズ」の裏には黒ずくめの怪しげな男がいた。その男は持っていた青い小箱を紙袋の中に入れると、中から夢の中でベティが空港で別れた老夫婦に瓜二つの小人が出てきた。

ジョーはカミーラを殺し、ダイアンはジョーから青い鍵を受け取った。

その夜、部屋に戻ったダイアンはおびえたように青い鍵を見つめていた。するとドアの隙間からあの老父婦の小人が入ってくる。そして、みるみるうちに等身大の大きさになってダイアンに襲いかかってくる。

ダイアンは恐怖に怯えて叫びながら寝室に逃げ込むと、引き出しに入れていた拳銃で自ら頭を撃ち抜いてしまった。その瞬間、部屋は青い光とスモークに包まれる。程なくして黒い不気味な男が現れると、すぐに消える。

映画の前半で描かれた夢は、ダイアンが死に際に見た幻想だった。彼女はベティとリタの幸せな幻影を見ながら死んでいったのだ。「クラブ・シレンシオ」では、青髪のマダムが「お静かに」と悲しげに呟き、物語は幕を閉じる。

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