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異色のキャスティングの顛末ー配役の魅力

©大島渚プロダクション
©大島渚プロダクション

大島は生前、著書で「一に素人、二に歌手、少し離れてスター、新劇俳優は十番目」と語っており、演技経験のない素人や駆け出しの新人俳優をキャスティングすることを好んできた。

例えば、大島の代表作である『愛のコリーダ』では、主演の阿部定役に劇団天井桟敷の劇団員だった松田暎子を抜擢。また、遺作となった『御法度』(1999)では、俳優に混じって映画監督の崔洋一を近藤勇役に抜擢している。

本作のキャスティングにも、こういった大島の意向が強く働いているように思われる。しかし、本作に限っては、当初想定されていたキャストと実際のキャストは大きくかけ離れている。

まず、セリアズ役には当初アメリカン・ニューシネマの名優として知られるロバート・レッドフォードが想定されていた。しかし、脚本を読んだレッドフォードは脚本の内容に納得がいかずオファーを辞退。その後、大島は舞台版『エレファントマン』に出演していたボウイにオファーしたという。

また、ヨノイ役には当初高倉健が想定されていた。しかし、脚本を読んだ高倉が主役が4人いることに納得が行かず辞退。その後、沢田研二や滝田栄に声をかけたが、両者ともスケジュールの都合でオファーを辞退し、最終的に坂本に白羽の矢が立った。

そしてビートたけしが演じたハラ役は、当初勝新太郎が演じるはずだったが、脚本の修正を条件として提示されたため、代わりに緒形拳にオファー。緒形は出演にかなり乗り気だったが、大河ドラマに出演することになりやむなく辞退。最終的に大島は、バラエティ番組で共演していたたけしを指名したという。

ちなみに、本作のキャスティングの最大の功績はたけしの起用だろう。特にラスト、画面に大写しになるたけしの満面の笑みは、哀愁や狂気、そして人間本来の慈しみなどさまざまな感情を内包しており、鳥肌が立つほど素晴らしい。なお、たけしは、かねてより大島に映画への興味を打ち明けており、大島もたけしに監督になることを勧めていたという。その後のたけしの監督としての飛躍を考えると大島の慧眼に驚かされる。

なお、ヨノイとセリアズのキスシーンには、セリアズに飛びかかる兵士役として三上博史が出演している。本作が映画初主演となる三上は、大島が監督するはずだった『日本の黒幕』に主演する予定だったが、途中で企画が頓挫。オーディションを受け直して本作に早くとして出演したという逸話があり、わずか数カットの出演ながらも強烈な存在感を放っている。

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