芝居のテイストは「大河ドラマ?」
コメディの定石を徹底した演技の魅力
本作の注目は、主演の二階堂ふみの演技力だろう。これまで、園子温監督の『ヒミズ』(2012年)や『プロミス・シンデレラ』(2021年)などのコミック原作の作品に数多く出演してきた二階堂だが、本作では彼女のこれまでの経験が見事に炸裂。いささかオーバーな振り切った演技ながら、麻実に恋をしたり奮闘する一人の男性の姿をしっかりと演じており、見ている側も百美に共感しつい応援したくなってしまう。なお、百美役は当初、原作の男性の設定を変更し女性にする予定だったが、二階堂自身が男性役で演じることを提案したという。
また、GACKTの放つ“CG感”にも注目。元々の存在が浮世離れしたGACKTだが、魔夜ワールドらそのまま出てきたような妖艶な存在感が見事にはまっており、本作が虚構であることに説得力を持たせている。
なお、本作の監督である武内英樹は、俳優たちに「これは大河ドラマである」と伝えた上で、とにかく真面目に演じることを要求したという。確かに、GACKT演じる麻実が、「千葉解放戦線」との戦いを前に演説をするシーンで、哀愁漂う顔で「ダサいたま、クサいたま、めんどくさいたま…」とつぶやくシーンは思わず吹き出してしまう。“バカバカしいことを大真面目にやる”というコメディの定石を徹底しているからこそ、本作は笑って楽しめる作品に仕上がっているのである。