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“夢”という設定が形作る独自の世界観〜脚本の魅力

レオナルド・ディカプリオ
レオナルドディカプリオGetty Images

本作を特徴づけるのは、なにより独自の夢の描写にある。本作では、夢が入れ子状の多層構造になっており、階層が深くなるに従い時間の経過が遅くなるというルールが最大限に活用されているのである。

例えば、ロバートの夢に侵入したコブたちがバンで追っ手から逃げるシーン。運転手を務めるユスフは、後部座席で眠るコブたちを強制的に目覚めさせるために、橋の欄干を突き破って川へダイブする。このとき、車の自由落下運動が第二階層には無重力として襲いかかる。また、着水までの10秒は第二階層では3分、第三階層では60分に引き伸ばされ、任務の制限時間として課される。これにより、本作独自の「3段重ねのサスペンス構造」を生み出している。

また、本作の世界観が、コブ個人の愛の物語に帰結する点も鮮やかである。彼は、「ある行為」によって愛する妻・モブを自殺に追い込んでしまっていた。終盤では、アリアドネが彼の夢に侵入することで彼の過去が明らかになる(この描写からはアンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』の影響も垣間見える)。

一方、本作にツッコミどころがないわけではない。例えば現実世界における自由落下運動は、なぜ第三階層に反映されないのか。コブたちは選りすぐりの精鋭のはずなのになぜヘマばかりするのか。そして「なんでもアリ」の夢のはずなのに、なぜこんなにもアクションが単調なのか―。

いや、細かいことには目をつむろう。夢の世界は理由だって「なんでもアリ」なのだ。細かい部分のアラに目を向けなければ、きっと楽しめるはずなのだから。

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