ルビーの人生を彩る秀逸な選曲〜音楽の魅力
音楽映画である本作には、実に20曲近くの挿入歌が使われており、選曲のセンスも抜群。今回は、その中から印象的な4曲について紹介しよう。
まずはイギリスのバンクロックバンドであるザ・クラッシュの『I Fought the Low』(1979年)。
CMでも使われ有名になった本曲は、ルビーが自ら漁協を立ち上げた父の手伝いをするシーンで流れる。本曲の歌詞は「強盗をした友人が法律と戦い負けた」という内容で、自ら漁協と袂を分かった父フランクの心情とリンクしている。
続いて、『You’re All I Need To Get By』(1968年)。原曲はマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルによるデュエットで、「人はお互いに誰かを必要としている」(ルビー談)という曲である。
本曲は、当初恋愛の歌としてルビーとマイルスとのデュエット曲として発表会で歌われるが、その後、父親と2人きりの中で歌うことで、歌詞の意味合いが家族の歌に変わる。ルビーの喉に触れて曲を「聞こう」とするフランクの姿は、観客の涙を誘う。
ルビーが入学試験で歌う曲がジョニ・ミッチェルの『Both Sides Now(青春の光と影)』(1969年)。「人生を二つの側から見る」という本曲の歌詞は、音のある世界と音のない世界双方から人生を見てきたルビーにぴったり。
「若い頃の楽しみ、苦労や悲しみも、振り返ってみると幻のよう」という歌詞も、これまでの自分への慰めとこれからの自分への励ましのようにも聞き取れる。まさに彼女の魂の歌だと言っていいだろう。
そして、エンディングテーマは、ルビー役のエミリア・ジョーンズによるオリジナル曲『Beyond the Shore』。本曲は、監督であるへダー自身が作詞を手掛け、家族と別れたルビーの今後の未来を示唆する爽やかな曲になっている。
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