村人として登場するエキストラたちの演技に注目
ミッドサマーの演技といえば、やはりなんといっても主役のダニーを演じたフローレンス・ピューの演技だろう。ダニーは、彼氏のクリスチャンに「重い」と思われたくないがために、家族を失ったトラウマを押し殺して生きている。
しかし、ひょんなことから過去の記憶がよみがえると、トイレに駆け込みむせび泣く。「トラウマ」という理性ではどうすることもできない対象に支配された女性の生理的な嫌悪を、ピューは全身で演じている。
とくに圧巻は、クリスチャンの「性の儀式」を目撃したダニーが、ホルガ村の女性に自らの感情を吐き出して女性と共に泣く場面である。ピューは、インスタグラムで本作のこぼれ話を披露し、この鬼気迫るシーンに何日もの時間をかけたことを記している。
また、村人として登場するエキストラたちの演技にも注目したい。特にダンスコンテストの前、お茶を配る女性の目線は、まさにカルト宗教の信者のそれであり、自分たちの行動を信じて疑わない芯の強さを感じる。
なお、本作には、『ベニスに死す』で一世を風靡した「世界一美しい少年」ビョルン・アンドレセンも、儀式で飛び降り自殺を図る老人・ダン役で出演。2021年に公開されたビョルンの人生を追ったドキュメンタリー『世界で一番美しい少年』では、本作の舞台裏にも密着している。こちらも併せてチェックしたい。