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不協和音が絶妙に気持ち悪い~音楽の魅力~

本作の音楽について語る前に、まず本作が「音楽的な映画」であることに触れなければならない。ここで言う「音楽的な映画」とは、ミュージカルのように音楽がたくさん登場するという意味ではなく、「本作自体が音楽」という意味である。

例えばダニーの苦しそうな泣き声や、過呼吸の息遣い(ダニー役のピューによれば、気管軟化症という病気の影響があるという)。そして、ダンスコンテスト出場者に配られるお茶をかき混ぜる音や、生肉にたかるハエの羽音。極め付けは、不協和音が絶妙に気持ち悪い村人たちの合唱ー。本作には、こういった「生理的にくる」効果音が散りばめられている。

そして、本作の劇伴音楽も、こういった効果音の延長線上で語られなければならない。

ちなみに劇伴音楽を担当したのは、イギリス出身のボビー・クルリック。ダークアンビエントを特徴とする音楽プロデューサーである。

右は音楽を担当したボビー・クーリック。左は監督のアリ・アスター
右は音楽を担当したボビークーリック左は監督のアリアスターgetty images

ボビーは、本作の劇伴音楽で、低音のエコーや高音のコーラスを基調に使用。色彩豊かな映像とスリラーを組み合わせた独自の世界観を構築している。

また、ホルガ村の儀式の音楽は、合唱作曲家のジェシカ・ケニーが担当。実際の宗教音楽が土台となっているだけあり、ホルガ村の女性たちが交わす「呼吸によるコミュニケーション」とともに、作品にリアリティを付与している。

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